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導入事例

導入事例

熱解析を社会課題解決に活かす
社会熱応用工学において
10日かかっていたデータ解析が
1~2日に短縮

芝浦工業大学

導入背景と解決策

  • 課題
    • データ解析に10日を要し、実験結果の検証がスムーズに進められず、研究の進捗に支障をきたすことがある
    • 半導体価格が高騰し品薄が続く中、予算内かつ年度末までに導入したい
  • 解決策
    • CPU、GPUともに求める性能のパーツを搭載し、約10日かかっていたデータ解析を1~2日に短縮
    • 必要なパーツを確保できたことで、半導体の高騰や品薄が続く中でも、見積価格で希望時期に導入

芝浦工業大学 工学部 機械工学課程 社会熱応用工学研究室では、研究用途に合わせてカスタマイズした「THIRDWAVE Workstation N6632」を導入。従来10日ほど要していたデータ解析を1~2日に短縮した。これにより、条件を変えながら解析を繰り返す実験が容易になり、研究のスピードと質の向上につながっている。


人体から都市、自然対流まで、熱解析で社会課題の解決を目指す

社会熱応用工学研究室についてご紹介をお願いします。

古川 琢磨氏(以下、古川氏):
社会熱とは、当研究室で作った言葉です。人体、都市、経済活動など、社会の営みと密接に関係する熱現象を、熱工学の共通した視点から捉えるという考え方です。
単に発生する熱量を求めるだけではなく、熱がどのように移動し、蓄積され、それが人体や都市環境、社会活動にどのような影響を与えるのかを、計測と数値シミュレーションの両面から明らかにしようとしています。最終的には、熱中症やヒートショックの予防、都市の熱環境改善など、具体的な社会課題の解決につなげたいと考えています。現在、大きく分けて三つの研究を進めています。

芝浦工業大学 工学部 准教授 機械工学課程 先進機械コース担当 博士(工学)古川 琢磨氏

サウナと水浴を繰り返す温冷交代浴に対応した生体温熱モデルを開発

一つ目は、人体の温熱反応解析です。特に、サウナと水浴を繰り返す温冷交代浴のように、周囲の温度が短時間で大きく変化する環境を対象としています。
従来の生体温熱モデルでは、体内の熱が温度勾配に対して瞬時に伝わると仮定するフーリエの熱伝導則が一般的に使われています。しかし、急激な温度変化が生じる環境では、熱流の応答に遅れが生じる可能性があります。そこで当研究室では、熱流束と温度勾配の応答遅れを考慮した非フーリエ熱伝導モデルを、全身の体温調節を扱うFialaモデルに組み込みました。
サウナ、水浴、休憩を繰り返す実験データと比較したところ、皮膚温度や深部体温の急激な変化を、従来モデルより精密に再現できることが分かってきました。
次の段階として、腕時計型ウェアラブルデバイスで測定した手首温度などの限られた観測データを、全身の生体温熱モデルに逐次反映させる研究を進めています。これは、観測データと数値シミュレーションを組み合わせて予測を更新する「データ同化」と呼ばれる手法です。将来的には、個人ごとの深部体温や熱的負担をリアルタイムで予測し、熱中症やヒートショックの予防につなげることを目指しています。

衛星観測と三次元都市モデルを組み合わせ、都市熱と社会活動の関係を解析

二つ目は、人工衛星データと都市モデルを用いた地表・都市熱の解析です。
人工衛星から得られる地表面温度や夜間光、公開されている三次元都市モデルなどを組み合わせ、都市における熱の蓄積や夜間冷却、人間活動の空間的な分布を解析しています。
衛星観測の利点は、国や地域をまたいで、同一の観測原理に基づいたデータを継続的に取得できることです。国内総生産などの公的統計は重要ですが、集計方法や公表頻度、空間的な細かさは国によって異なります。そこで、夜間光や地表面温度などの物理的な観測量を利用し、社会・経済活動を補完的に評価できないかと考えています。
ただし、衛星が観測する地表面温度から、人工排熱やエネルギー消費量を直接求められるわけではありません。日中に地面や建物へ蓄えられた熱、建物間の放射熱交換、風による熱輸送、地表面の材質など、複数の要因を分離する必要があります。
現在は、都市を多数の熱的な接点から構成されるネットワークとして表現し、建物間の形態係数や多重反射を考慮しながら、都市が夜間にどのように冷却されるのかを計算するモデルを構築しています。将来的には、衛星観測と都市熱モデルを組み合わせ、経済活動とエネルギー消費、人工排熱との関係を、物理量に基づいて評価することを目指しています。

12台のカメラによる同期撮影から、自然対流境界層の三次元構造を再構成

三つ目は、自然対流境界層の可視化と、層流から乱流へ移行する過程の研究です。
加熱された壁の近くでは、空気の密度変化によって陽炎のような揺らぎが生じます。当研究室では、この微小な密度変化を背景画像のゆがみとして捉えるバックグラウンド・オリエンテッド・シュリーレン法を用いて、温度差によって生じる流れを可視化しています。
一般的なバックグラウンド・オリエンテッド・シュリーレン法では、壁の存在によって壁面近傍を撮影できません。そこで、加熱する壁面そのものを鏡面とし、背景画像を反射させることで、これまで計測が難しかった壁面近傍の流れを捉えられるようにしました。
さらに、最近では東京大学の赤嶺先生のご協力をいただき、12台のカメラを同期させて撮影し、連続する画像間に生じた密度変化の三次元分布を再構成することにも成功しています。現在は、局所レイリー数の増加に伴って、横方向に伸びた組織構造がどのように分断され、乱流状態へ移行するのかを調べています。
この研究の中心的な目的は、自然対流境界層の乱流遷移が、有向パーコレーションと呼ばれる統計物理学の普遍則によって説明できるかを明らかにすることです。現在は基礎研究の段階ですが、自然対流における熱伝達の予測精度向上や、建築物・熱機器表面の熱設計にもつながる可能性があります。

いずれの研究でも、画像や観測データと数値シミュレーションを組み合わせるのですね。

古川氏:
そうです。ただし、すべての研究が映像解析というわけではありません。人体研究では温度計測と生体温熱シミュレーション、都市研究では衛星観測と都市熱シミュレーション、自然対流研究では高精細な画像計測と三次元再構成を組み合わせています。
人体の研究では、モデルに含まれる条件やパラメータを少しずつ変えた約300ケースを計算し、実測値と比較する必要がありました。このような計算を繰り返すことで、どの物理過程が皮膚温度や深部体温の予測精度に影響しているのかを評価します。
自然対流の実験では、横3840画素、縦2160画素の画像を毎秒30フレームで長時間撮影します。最長で1時間程度撮影するため、1回の実験でも膨大なデータ量になります。さらに、三次元再構成では12台のカメラから得られる画像を同時に扱うため、必要な計算量と保存容量は一段と大きくなります。

人体、都市、自然対流の各研究で大規模な計算とデータ解析を実施

その膨大なデータは、従来どのように解析していたのですか。

古川氏:
学生が普段使っているコンピューターや、研究室にあった10万~20万円程度の一般的なデスクトップコンピューターを使って解析していました。
高精細な長時間動画の解析では、旧世代のGeForceを搭載したコンピューターでも、1回の処理に10日程度かかっていました。10日後に結果を確認して、解析条件に問題があれば最初からやり直しです。
研究では、条件を変えて何度も解析し、結果を比較しながら方法を改善する必要があります。しかし、1回に10日かかると、3回解析するだけで約1カ月です。十分な試行錯誤を行うだけで半年近くかかることもあり、解析時間が研究の進行を制限していました。

カスタマイズの提案力と対応の速さを評価

その課題を解決するため、ワークステーションの導入を計画されたのですね。サードウェーブ製品を選定した理由をお聞かせください。

古川氏:
前職の工業高等専門学校で小型サーバーを調達した際、ドスパラから何度か購入した経験がありました。BTOで構成を決める際の提案が、研究用途と予算のバランスをよく理解した内容だったため、好印象を持っていました。今回も、その経験からサードウェーブを選びました。

研究室に導入されたTHIRDWAVE Workstation N6632

THIRDWAVE Workstation N6632を選定したポイントを教えてください。

古川氏:
まず、将来的にメモリーやGPUなどを増設できるよう、拡張性の高いタワー型を選びました。
研究によって使用するソフトウェアが異なり、CPUの性能を必要とする計算もあれば、GPUの並列計算性能が重要になる解析もあります。
例えば、オープンソースの数値流体解析ソフトウェアであるOpenFOAM(Open-source Field Operation and Manipulation)は、標準的な使用方法では多数のCPUコアを使った並列計算が中心です。一方、高精細画像の解析や今後導入する計算手法では、GPUの性能が重要になります。
そこで、CPUには64コアのAMD Ryzen Threadripper 9980X、GPUには16GBのビデオメモリーを搭載したGeForce RTX 5080を選択しました。CPUとGPUのどちらか一方に偏らず、研究内容に応じて異なる計算方法を使い分けられる構成にしました。

導入はスムーズでしたか。

古川氏:
2025年11月に見積もりを依頼し、2026年1月に注文、2月に納品してもらいました。当時は半導体関連製品の価格上昇や品薄が懸念されていましたが、当初の見積価格どおりに、予定した時期に導入できました。問い合わせへの対応も速く、大変助かりました。

CPUとGPUの双方を強化し、多様な解析に対応できる構成とした

10日かかっていたデータ解析が1~2日で完了

導入後の効果を教えてください。

古川氏:
データ解析の速度は圧倒的に向上しました。従来は約10日かかっていた画像解析が、現在は1~2日で完了します。
単に計算時間が短くなっただけではなく、結果を確認して条件を修正し、すぐに再解析できるようになったことが大きいです。研究に必要な試行錯誤を、現実的な期間内で繰り返せるようになりました。
学生も最初に画像解析を行った際は、処理速度の違いにかなり驚いていました。解析を安心して任せられるようになったため、現在は実験装置の製作や新しい計測方法の検討にも時間を使えるようになっています。研究室全体として、心配事が一つ減った感覚です。
学生はLinuxを使って、研究室内外からワークステーションへ遠隔接続し、データ解析を行っています。機械工学を学ぶ学生にとって、コマンドラインによる操作や遠隔計算環境の管理を経験する機会は必ずしも多くありません。その意味でも、計算技術を実践的に学ぶ良い機会になっています。

導入後の安定性やサポートはいかがですか。

古川氏:
導入後は安定して稼働しており、故障によってサポートをお願いしたことはありません。長時間の解析を安心して実行できています。

長時間の大規模解析でも安定した稼働を続けていると語る古川氏

熱解析を通じて社会現象を理解し、社会貢献につなげたい

今後の展望を教えてください。

古川氏:
当研究室は発足から2年目で、現在は実験データの収集と解析基盤の構築を進めている段階です。今回のワークステーション導入によって研究環境が整ってきたので、今後は三つの研究をさらに加速させたいと考えています。
都市熱研究では、建物間の形態係数や放射の多重反射を考慮し、都市が夜間に冷却される過程を高精度に予測できるモデルを構築します。人体研究では、生体温熱モデルとウェアラブル計測のデータ同化を進めます。自然対流研究では、長時間・三次元の計測から、乱流遷移の普遍則と熱伝達との関係を明らかにします。
まずは熱を通じて、人体や都市、流体現象への理解を深めることが重要です。その上で、熱中症の予防、都市熱環境の改善、熱機器の高性能化など、具体的な社会貢献へつなげたいと考えています。

そのような研究に、サードウェーブのワークステーションはどのように役立つでしょうか。また、研究者の皆さまにメッセージがあれば教えてください。

古川氏:
研究を継続的に進めるための計算環境を構築できたと考えています。
大規模な計算ではスーパーコンピューターが必要になる場合もありますが、その前段階として、計算モデルやプログラムを手元の環境で十分に検証する必要があります。また、問題の規模や計算手法によっては、GPUを搭載したワークステーションだけで研究に必要な計算を完結できる場合もあります。
人工知能を含む計算についても、クラウド環境だけでなく、研究室内の機器で実行するという選択肢があります。繰り返し計算する場合には、クラウド利用料、データ転送時間、運用の自由度などを総合的に考える必要があります。
プロトタイプの作成から中規模の本計算までを一貫して行えるローカルな計算環境として、今回導入したサードウェーブのワークステーションは、非常に使いやすい構成になっていると感じています。

導入機器紹介

THIRDWAVE Workstation N6632

OS OSなし※
CPU AMD Ryzen Threadripper 9980X (3.2GHz-5.4GHz/320MB/64コ
ア/128スレッド) ※
グラフィック NVIDIA GeForce RTX5080 16G
(HDMI x1/DisplayPortx3) x1枚※
メモリ 128GB (DDR5-5600 ECC RDIMM/32GBx4)※
ストレージ 1TB SSD (M.2 PCIe 4.0 x4 NVMe) x1

※印がついている項目はカスタマイズスペックです。

AMD Ryzen Threadripper 9000シリーズを搭載し、高負荷業務をスムーズに行える性能を持つ。最大2基のNVIDIA RTX PRO™ 6000 Blackwell Max-Q Workstation Edition 96GB GPUを搭載可能。従来比で17%の筐体容積削減を実現したコンパクトな設計を持ちつつ、冷却性能と静音性を高い次元で維持している。

お客様紹介

芝浦工業大学

設立 1927年
所在地 東京都江東区豊洲3-7-5
企業HP https://www.shibaura-it.ac.jp/
インタビュー参加者 芝浦工業大学 工学部 准教授 機械工学課程 先進機械コース担当
博士(工学)古川 琢磨氏

「社会に学び、社会に貢献する技術者の育成」を建学の精神として、1927年に東京高等工商学校として設立。以来「実学を通じて真理を探究できる技術者、高い倫理観と豊かな見識を持った技術者、自主・独立の精神をもって精微を極めることのできる技術者の育成」を掲げて、多くの卒業生を輩出し、社会の発展に貢献している。

記事作成日:2026年9月

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